more #1

♪あー心にーあーいがなーけーればー

……昔話をするとして、どれから話しようかとなるんですが、起点としてベストはやっぱりmoreなんだろうなと思いました。

まずトリビア的な話をこぼすと、この曲取り掛かってた時期に足折りました。 音楽やり始めるとロクな事ないんですよ僕。 幸い曲は出来上がってたので、病室にノートPCを持ち込んでなんとかしました。 ボーカル録り直しを考えてた時の出来事なので実は仮歌にピッチ補正掛けて乗り切ったんです。 色々ご縁があって、Toy Musical 3でプレイ出来るそうなのでそちらでもプレイしていただければ幸いです。

moreのBMSに関して一番特徴的なのは、難易度表記がめちゃめちゃややこしいことだと思います。 もちろん理由があって、SPAだけやって終わりにして欲しくなかったんです。1 とは言え、僕としては基本SPHを主軸に譜面を作っているので「これがメインだよ」ということは提示したかったので……

SP DP
Normal capable / 有能な relative / 相関的な
Hyper symbolic / 象徴的な dual / 二重の
Another epic / 叙事的な progressive / 革新的な

という形で単語の意味で提示しています。 一部苦しいです、特に[capable]。 ラテン語の「捕らえることの出来る」が意図に近いですが、これ動詞の自/他を間違えて採用してますね。 今Weblioで確認し直しました。

このblogの最初のエントリでもクドい話を延々としたとおりで、僕の場合譜面に求める要素と品質がヤケクソに高いのです。 が、ちょっと前にこの件でrateさん2に「難易度とタイトルの相関が独自すぎて……」と言われてしまったので、おそらく各所で混乱を招いていただけだった様です。

[BMS]more - Y-ItoO

さて、解説に入ります。まず基準点の[symbolic]をしっかり確認します。 どこかでコメントされてしまったのですが、この曲、ほとんどドラム叩かせることに終止しています。 理由は割と単純で、この曲自体がTrance Metal的なバンド+マニピュレータの組み合わせの曲で、象徴的なフレーズ以外に譜面側に持ってこられるパートがドラムばかりなのです。 そして、僕自身の癖で楽器そのものの動きを譜面にトレースするように配置することが多いのですが……今回はその癖がよく出ている8小節目~15小節を取り上げます。 まぁ、moreから染み出している意識的な部分だけ抜粋して3エントリくらいになると思います。 特徴のある譜面ではないのですが、6譜面をまたぐと見えてくるものもあると思うんです。

beatmaniaの伝統として1がキック、3がスネアを維持しながらあちこちにシンバルが配置されます。 以降2467にハイハット、左のシンバル、右のシンバル、チャイナという形は58小節以降でも同じ軸を維持しています。3 ドラムセットに座っている位置に対応してこの位置が維持されているので、譜面にミラーをかけるとパンと右左が一致するはずです。

また、beatmaniaの伝統の13→キックスネアが維持されながらハットが伝統である4から外れて2に来ている都合、123周りの隣接配置がかなりあります。 これはいわゆるカプセルを狙ったものではなく、僕が遊びでドラムを叩く時の好きなフレーズとの兼ね合いで自然にここに来てしまったのです。 同様のことがこの8小節続きます。 9小節目のタム回しは見える人には本当にドラムマニアの譜面に見えてくると思います。 346にそれぞれスネア、ハイタム、ロータムをアサインしていると考え、それぞれの軸の隣を使って縦連打を回避していきます。 このアサインは後半例外が発生します。 81小節目、このロングノートに対して346の軸を使うと、82小節目のギターが使っている456の最初の4とロングノートの終わりが繋がってしまいます。 ではギターは567に……とすると、88小節目のシンバルが置けなくなります。4

先程もルール破りの理由の話に触れていますが、8小節目のフロアタムもその例ですね。 本来は7に来るはずなのですが、チャイナの位置と交じるのと、話のスジに対して対立しますが、どこでもいいから華やかに手が舞うようにするのに一番いい場所だったのでここに来ています。 同じようにスプラッシュ5もスクラッチに来ています。 ドラマーごとに色んな所に置かれるシンバルなので「まぁええやろ」ということで軸が固定されすぎたせいで空きが出るスクラッチアサインされました。 このイントロの主役は完全にドラムです。 この8小節の間、派手なフィルとともに華やかに、騒やかにドラムが大暴れしてる様を表現する必要があります。 しかし、強固なルールを厳守すると動きに制限がかかってしまいます。 それをうまく緩和しつつ、ルールを守ったり守らなかったりしないとならないのです。 また、譜面が縦連打に寄ってしまうと譜面の縦方向に筋が入っているように見えてしまいます。 縦連打型の譜面をプレイしているときにそのように見えてくることはないでしょうか?6 ドラムの大立ち回りを華やかに見せるため、またプレイ中に見えてしまいがちな縦の筋を見えなくするためにもルールを破る箇所が必要なのです。 ルールを破るのには理由があります。

また11小節、13小節でも微妙な揺れを使っています。 11小節のフラムとゴーストノート7、13小節のフラムは同じスネアのまま軸を微妙に維持していません。 弱いスネアの音を右上にズラすのは僕の他のBMSでもよく見る癖です。 左上ではない理由は単純にキックの弱い音も同様に斜め上にズレる癖があり、こっちは左上に行けないので必然で右上に押し出されるのです。 11小節の3+7のフラムと13小節目の3+2のフラムの差に関しては、一発のフラム/タムのフラムを含めたフレーズの一部の差をこういう形で表すことが多いのです。 実際に最後にはスネアとフロアが3+7の組み合わせになります。 両手で叩く/腕を開くことを表すときに両端に置くのは誰もが思いつく見立てですが、この場合13→キックスネアの軸に伴ってこうなるのが自然だと考えています。

[symbolic]の他の部分はそんなに言及するような部分はなさそうです。もちろんフレーズの折返しの問題が何度も発生しているのですが、それは別なBMSのほうが説明しやすそうなので今後の話題へと回します。

最後に、moreのリファレンス元を貼っておきます。

Enter Shikari - Sorry You're Not A Winner (Official Music Video)


  1. 以降、難易度表記は本家beatmaniaで記述されているものに関しては準拠する形で表記します。

  2. rate-dat氏。140さんとmoreのBGA作ってくれた有り難い方で、この時のスラッシュ入り"Y-ItoØ"ロゴを作ってくれたのもrateさんです。

  3. 多くのドラムセットが左右の一番手の広がるところにチャイナシンバルを置いているはずですが、大体右奥、ライドの上にある記憶です。後ろなんて化け物も居るんですけど……

  4. 実はこのシンバルは「7に置く」はずだったチャイナではありません。拍頭にシンバルを入れてるので、伝統的な習慣に従ってSに来てしまっているのです。

  5. ちっちゃいシンバルです。

  6. 縦連打はむしろ好きです。僕の穴譜面で何度も嫌な顔をした方が居ると思います。

  7. 大体の教則本では「聴こえないくらいの小さい音」となってるんですけど、意図を誰も解説してくれんのですよね……いや僕も意図となるとうまく説明できるかどうか……。基本的に減衰音であるドラムの音に持続音的な要素を足す為に目立たない弱い音を挟む、くらいだと思います。わかりやすいのはAmenの「スタスタ」。