more #2

シリーズの真っ只中なのにひどく間が空いてしまいました。 ……何もしていなかったわけではないんです。 ただちょっと譜面の画像化ツールを探すのに手間取ったのと、まとまったお金が入ってしまったのでそろそろギター買い換えるかということで買い換えた結果、気が済むまで弾き倒す毎日だったものでして……言い訳ですね。

ギターの話ということで、こぼれ話を先に。 more自体は業界で言う「ハーフダウン」の曲です。 なんですけど、実は2本のギターの片方は5音下げにカスタムというか、ナット割ったついでに専用にしてもらったギターをそのままのチューニングで使っています。 そういうアタマの悪いことができる弦が実際売られておりまして……いやコレがジャズ用、よしんば譲歩してもSRVのコピーみたいな話は知っとるんですが、「7弦弾ききれないだろうしLow-Bあればええや」という発想の結果です。 絶叫前のハーモニクスがこのチューニングじゃないと説明できないはずなので、そういう遊びが好きな人はぜひ調べてみてください。 僕はもうこの曲のTAB忘れてます。

あと白状しないとならないこととして、僕この曲弾けないんです。 イントロとサビのリードパートがどうしても弾けなくて、メトロノーム鳴らしながら細切れで弾いたものを繋いでます。 いつまでもギターとこんな向き合い方してちゃダメなんですよね。 というわけで気が済むまで弾き倒してるんです。

というわけでmoreの話の続きです。 [symbolic]の象徴的な、演奏と譜面をどうリンクさせたいのかという解説に続いて、SPの3譜面をどう変化させているかの話です。

先にSPの譜面を比べやすいように3譜面並べた画像を用意してあります。 どうしても気の触れたサイズになってしまったのでご容赦ください。

譜面の難易度セットはNormal/Hyper/Anotherと3つにするのが慣例で、名前こそ違えどmoreもそれに倣っています。 その差別化の方法ですが、大体はパートを間引くことか、フレーズを間引くことかに集約されるんです、味付け的に他の方法を差別化の方法として使っています。 11小節目を見てください。 前回の解説でフラムの表現の話をしていたところですが、[capable]だけフラムの表現を省いています。 煙に巻くつもりはないのですがめちゃめちゃ難しい方法で説明します。 本来譜面……もう少し大きく、「演奏を記述する」こととは音の変化とタイムラインの絶対的表現ではなく、リズム/ピッチのマトリクスと、奏法の指示による多次元、相対的な記述を演奏者がずるためのものなのです。 何が言いたいのかというと、[capable]ではBMSでは敬遠されがちな「ズレ」としてしか表現できないフラムの指示を省いています。 省いたフラムの表現を補填するために、wav側にフラム分の遅れがあるスネアの音があるはずです。1 流石にずっとそれをケアし続けるとしんどいので、13小節目はwav側の補填をしていないのですが、このタムフレーズの微妙なズレが省略されています。 先程の演奏の記述に対応する話ですが、バンド演奏をしたことがあるドラマーの殆どが「譜面通りに叩いたけど違う」というケースに遭遇して、どのようにタメるか、またはどのようにハシるかということを考えたことがあると思います。 「そんな些細な」と思われるでしょうが、このタメがないとこのフレーズの疾走感がうまく出ないのです。 ちなみに[epic]の方は更にフラムの表現分のズレまで入っています。 僕としては嫌がらせと、SPAしかやらないプレイヤーのレベルなら文句言いつつも光らせに行ってくれるという信頼のもとに一連の指示をすべて時間軸に落とし込んでいます。

16小節以降のSuperSawは[capable]だけフレーズの間引きをやっています。 まずこれだけは人に嫌われても言います。 BMSを作るに当たってこの形のフレーズの間引きをするなら、フレーズを統合した別wavを作るのが当然だと考えています。 これはマナー……流儀の問題です。 ではどう間引くのか? 正確にはどう手抜くのかです。 ラクしたいのではなく、フレーズのリズムを構成する芯の部分を見切って、そうではない部分を叩かなくてもフレーズを演奏したと思わせるようにするのです。 [symbolic]の譜面を見てください。 このフレーズの場合、8分音符でカウントして[2, 3, 3, 3, 3, 2]という継ぎ目が見えるかなと思います。 [capable]の方ではその継ぎ目の最後を省いて、継ぎ目を残して量を減らしています。 わざわざ説明が必要ではないことを話しているかもしれません。 ただ、僕は相当に意識してこの部分をチェックしていたのです。 この作業はmoreに限らず、すべてのBMSで行っているチェックです。 僕が僕の分身として創ったフレーズです。 僕の分身を僕の手で無闇に裂くわけにはいかないのです。

31小節目のギターのフレーズでも同様な[capable]だけ間引きをやっていますが、まぁこれは前の話より単純な手抜きです。 ただ、3譜面に渡って見ると、[epic]で増えたハットの分以上に違いがあります。 [epic]の32小節目、3拍目が単純な[symbolic]のズラしではない部分で、1と7にドラム側のwavが当たっているので細かく回避しようとしています。 また、その結果425342…のような見えやすい連続を不自然に感じるので回避する等、微妙な調整を繰り返した結果です。 手癖的なものですが、両腕が寄ると音程的には高めだとか、体の軸に対して肩の入りが捩れるタイミングと和音の展開のタイミングを合わせたり、のようなことをしがちです。 勿論、固定運指を完全に意識していない故の発想です。 僕がBMSの譜面を「演奏するもの」と定義している限り、右手と左手が所定のリズムの組み合わせで動いて、それを体感することは所定のメソッドでクリアしやすいかどうかよりはるかに重要なのです。 ……音楽的な話で、ましてや鍵盤楽器を弾く人間が「体の軸」とか「肩の入り」とか絶対に言ってはいけない2のですが、「ベースは顔で弾く」みたいな楽理どころか常識でも説明できない表現もあるものなので、そういうことにしてください。

40小節目……サビにオシャレな省略があります。 42小節目、[symbolic]だけロングノートが入っています。 フレーズ的にはレガートになる部分をロングノート化して間引こう、というところです。 流石に[capable]でギターとドラムの複合やらせるのはひどいけど、ギターだけならそこまで省略しなくても……となると、レガートの部分をロングノートに出来うるのはやさしい複合フレーズにしたい[symbolic]のみなんです。 また、ここのスクラッチも冒頭同様に人間的な揺れを[capable]のみ省略しています。 56小節目、ブレイク前の短いロングノートは勿論フレーズのリリースに対応するものですが、こちらはどちらかというと嫌がらせの色が濃い表現です。

moreの中でやっている細かいチェックは実はだいたいこれがすべてで、58小節目以降は今までの話の繰り返しになります。 ピックアップするとすれば65小節目、[symbolic]で表現している腕を開く動きが[capable]ではロングノートが邪魔で出来ないので、腕の開きを固定したままの同時押しにしています。 この方が見た目簡単に見えるんじゃないかなと考えています。 また、[epic]ではこの同時押しの間にロングノートを捩じ込んでいます。 フレーズのコンビを組み合わせる場合、このように片方のフレーズの間にもう片方のフレーズを挟み込むのは見た目がわかりづらくなるので難しくなると考えています。 もっともこの形の同時押しだとロールオーバー問題が発生するのですが、「SPAなら大丈夫でしょ」という意味合いもあります。 なかなかNキーロールオーバーのキーボードに巡り会えない3のでかなり気にせざるを得ないのです。 逆に、ロングノートにしようとしているフレーズが、しないほうが難しいフレーズというケースも……まぁ縦連打ですね。 81小節目がそれですが……まぁ見てのとおりです。

SP譜面に関して解説したいところはだいたいこんなところです。 moreの譜面はあと4つありますね。 次はDP3譜面と、もうひとつはセットで話さなくてはいけない別な曲とあわせて触れていこうと思います。


  1. dra_snd.oggがそれです……名前分かりづらいんだよ。多分「Aパートのドラム、スネアにディレイ付き」の意味だと思います。

  2. 正しいピアノ演奏は正しい姿勢から、が常識です。

  3. この頃はHappy Hacking Keyboard Lite2です。カプセルに弱いやつですね。今のThinkpad keyboardも同じタイプで…